関節の痛みとヒアルロン酸 その3

関節を曲げ伸ばしすることが大事だということを説明してきました。
今回は、どうすればよいかを説明します。まず前回までの復習!

曲げ伸ばしが重要であることの3コの理由

① ヒアルロン酸の生産率をあげる

② 軟骨の細胞に酸素と栄養を与える

③ 関節を軽く柔らかくする


①の「ヒアルロン酸の生産率と曲げ伸ばしの関係」はその1で説明しましたが、実はもう1つ大事なことがあります。それはヒアルロン酸の“寿命”です。

その1では説明しなかったのですが、ヒアルロン酸の寿命は想像を遙かに超えて短いのです。
いくつかの研究報告がありますが、だいたい半日から数日以内に半分ぐらいは無くなってしまうようです。
これは時間単位でどんどん消化されているということなのです。

②の「軟骨の細胞に酸素と栄養を与える」は、その2で説明したとおりです。
膝の曲げ伸ばしは、目の角膜のための“まばたき”のようなものだということを思い出してください。

さて①と②の事実を知ることで、非常に重要なこと、つまり
『関節は、曲げ伸ばしをしないで長時間同じ角度のままにしていてはいけない!!!』
ということがわかります。

さて膝の場合、さらに“特殊な事情”があります。

というのは、踵を地面につけ膝を真っ直ぐ伸ばして歩くほ乳類は人間だけなのです。
人間は歩くとき、脚(あし)を棒のように使うため、膝をほとんど曲げ伸ばしすることはありません。
では階段や坂道はというと、それでもやはり40度程度しか曲がりません。
つまり、人間の日常生活で大きく膝を曲げ伸ばしすることは、自転車に乗ること以外にはないのです。

ではどうすればよいのかというと、

毎日1時間に回は、真っ直ぐから90度(もしくはそれ以上)まで、膝の曲げ伸ばしをしてください。

1度に5,6回程度で充分です。
これで、膝を曲げ伸ばしする回数が他のほ乳類と同じくらいになります。

最後に、「③ 関節を軽く柔らかくする」についてですが、イスに座りながら膝の曲げ伸ばしをすると、「意外に力が要るなぁ…」と感じるひとがいるかも知れません。
これは膝を伸ばすための太ももの前側の筋肉が弱いのではなく、太ももの裏側の筋肉(膝を曲げるための筋肉)が膝を伸ばすことの邪魔をしているからです。
手首をブラブラさせるときのように、最小限の力で上手く関節を動かすことができなくなってしまっているのです。
つまり関節を曲げる筋肉と伸ばす筋肉の協調がくずれて、関節が固くなっている状態です。
これでは関節を締め上げていることになるので、関節の痛みの重大な原因となります。

では、具体的にどうすればよいのかというと、

(図1)のように、イスに座って足の裏を床に滑らせながら、できるだけ太ももには力を入れずに膝を90度以上大きく曲げ伸ばししてください。一度に何回もすることに意味はありません。
毎日毎時間5,6回程度、少しずつ行うことで、力を抜いて動かす感覚を身につけることが重要なのです。

(図1)

立っているときは、(図2)のような感じでお願いします。一度に2、3回で十分です。

(図2)


それから、1週間に2日ぐらいは(図3)のように足の裏を床から離してしっかり動かします。

(図3)


膝の痛いひとの場合、余分な力が入る傾向ができあがっているので、大きく動かすことと力を抜くことがなかなか同時に成立しません。
(図1)の床を滑らせる運動を気長に続けて、膝を上手くリラックスさせることをおぼえてください。

以上まとめると、

● 人間独特の“膝を真っ直ぐにして歩く”という歩行スタイルのため、膝はそもそも“こわばり”やすい。

● これを防ぐために、出来るだけ力を抜いて膝を大きく曲げ伸ばしする。
56回でよいので忘れずに1日に何度もする(習慣にする。無意識の“のび”のようにする)。

● こうすることで関節液が撹拌されるので、軟骨に酸素や栄養分が行き渡って代謝が良くなる。

● さらにヒアルロン酸が増える(減らない)。
ということです。

肩や背骨の関節に関しても、膝と同様に“こわばり”やすいので同じことが言えます。

この項 終わり


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