関節の痛みとヒアルロン酸 その1

『ヒアルロン酸』、専門用語でありながら、非常に耳に馴染んだ単語だと思います。
しかしながら、その正体がなんなのか?
それはほとんど知られていないのではないかと思います。
そこで一度ヒアルロン酸について解説してみたいと思います。


問1 ヒアルロン酸の働きとは? 関節の潤滑剤である ○それとも
×

答え × 実際に関節の摩擦を減らしているのは“水”です。

少し極端かもしれませんが、実際に潤滑剤として働いているのは“水”です。みなさんも一度くらいは、濡れたタイルで足を滑らせてしまったことがあるでしょう。雨の日の車のスリップも、濡れたタイルでのスッテンコロリンも、スキーもスケートも… 全部“水”の『摩擦を減らす作用』によるものです。


問2 ヒアルロン酸は何の仲間? ①でんぷん ②タンパク質 ③油

答え ①でんぷん

ヒアルロン酸は2種類の糖が交互に長くつながってできた『でんぷん』の仲間です。『でんぷん』の仲間の寒天が“水”をつかまえるのと同様、ヒアルロン酸は水をつかまえて逃がさないようにします。ヒアルロン酸は1本がすごく長い(大きい)のです。だから水をつかまえることができます。

では、どれぐらい大きいかというと、

水ひとつぶの重さを体の中の他の物質と比べてみると、例えばブドウ糖ひとつぶの重さは、水ひとつぶの重さの10倍になります。タンパク質の重さと比べると、小さいタンパク質のアルブミンだと3800倍で、大きいタンパク質の抗体だと5555倍ぐらいです。

そこで問題。

問3 膝の関節液に含まれるヒアルロン酸1本の重さは水ひとつぶの何倍?

答え 30万倍

(大きさと長さはだいたい同じ関係なので、水ひとつぶの30万倍ある長い長い糸のようなものと考えてもらったらよいです。)

そう、とにかく巨大なのです。水にヒアルロン酸が溶けているというよりも、水が巨大なヒアルロン酸の網につかまっている感じです。ヒアルロン酸のたくさん入っている関節液にパチンコ玉を落とすと、ゆっくりゆっくり沈みます。関節液にはこの強いとろみがあるので、体重をかけても膝の軟骨と軟骨の間に水の膜を張らせることができるのです。逆にヒアルロン酸が少ないと、水の膜が切れてしまうので軟骨どうしが直接ぶつかってしまい、摩擦が大きくなります。

問4 どうしたら膝のヒアルロン酸を増やせるのか?

答え 膝を曲げ伸ばしすればよい。

膝の曲げ伸ばしの回数とヒアルロン酸の生産率との関係は、2009年に動物実験で明らかにされています。15分に1回、膝を30回ほどブラブラと曲げ伸ばしさせていると5時間後にはヒアルロン酸の生産が1.6倍になるというものです。

問5 ヒアルロン酸を増やすには歩けばよい。○?それとも×?

答え ×

人間は膝を真っ直ぐに伸ばして歩く動物です。脚(あし)の付け根の股関節と足首を動かして歩いていますが、膝はほぼ伸びたままです。階段の上り下りも40度程度の膝の曲げ伸ばしでできます。そもそも、通常の日常生活で0度―90度の膝の曲げ伸ばしをすることは、自転車以外にありません。

以上がヒアルロン酸の基本です。ヒアルロン酸を摂ることを心がけることなどなんの効果もありません。ヒアルロン酸の摂取不足で関節液のヒアルロン酸が不足するのではありません。膝の曲げ伸ばしが足りないのです。次回その2で具体的な運動について説明します。

その2につづく▶︎