そもそもお薬ってなに?

いろいろなタイプのお薬がありますが、いちばん一般的なものを説明します。
薬は、体の中の様々な働きを目的に応じて調節します。
スイッチを入れたり切ったりするようなイメージがわかりやすいと思います。
たとえば、炎症反応のスイッチを切ると炎症が治まり、痛みがなくなって熱が下がります。
これが抗炎症剤です。
体の中にはいろいろな組織や細胞があり、分業をしています。社会の中にいろいろな職業があったり、またそれぞれの会社の中にも様々な部署があったり……というのと同じことです。
そして分業しているとお互いに“連絡”を取り合う必要が生まれてきます。
薬とはこの“連絡”に細工をする物質なのです。
さてこの“連絡”には、大きく分けて神経とホルモンの二つがあります。

神経の方はわかりやすいと思います。
目が見たものが脳に伝わるのも、手を伸ばそうと思って手が動くのも、神経の中を電気信号が伝わるからです。電気が流れるわけですから瞬間的な調節です。
もちろん取り仕切っているのは脳です。

脳はいわば社長さんです。部下から情報を得て各部署に指示を出すわけです。しかしながらいちいち社長さんを通さなくても、たとえば“経理と人事の間だけで決済”のような、各部署同士のやりとりも出来た方が当然仕事がはかどります。
そこで登場するのがホルモンです。お薬が働くのはこのホルモンの方です。

インスリンを例にホルモンの説明をしましょう。 インスリンは膵臓が出すホルモンです。
ごはんを食べると食べたものが消化されて腸にやってきます。
腸の粘膜はブドウ糖(炭水化物)やアミノ酸(タンパク質)などの栄養分を吸い上げて血液に流し込むので、血液のブドウ糖やアミノ酸の濃度が上がります。
そしてこの血液が膵臓に流れて来ると、血糖値が上がっていることを察知した膵臓がインスリンを血液に流し込みます(分泌します)。
インスリンを分泌するということは「今、血糖値が上がっていますよ」という“連絡”です。
そしてこの“連絡”を受け取った筋肉と脂肪の細胞が、血液からブドウ糖を吸い上げます。
その結果、血糖値が下がります。つまり膵臓は筋肉と脂肪に対して、インスリンを使って情報伝達をしているのです。(*) ホルモン(=情報を伝える物質)はスイッチを入れる“鍵”と考えればわかりやすいです。

血液を流れてきた鍵(ホルモン)が、丁度当てはまる鍵穴(=スイッチ)を持っている細胞だけを見分けて、これらのスイッチを一斉に入れてまわるわけです。
たとえばインスリンは、ブドウ糖を吸い上げるという動作のスイッチを入れる“鍵”ということです。
血液はだいたい1分で体を一周します。ですから血液の中に分泌されたホルモンは、分単位で体の調節をすることができます。
お薬は、この“鍵”と形が似た合い鍵を人工的に合成して、スイッチ(=鍵穴)を操作するものが大半です。このタイプのお薬には大きくわけて2種類あります。
1つは、できの良い合い鍵を作って人工的にスイッチを入れるタイプと、もう1つは、わざと“出来そこない”に作った合い鍵で鍵穴を壊して、一時的にスイッチを切るタイプです。
難しかった人は、マンガで見る『ホルモンとお薬』を見てみてください。

*インスリンについて詳しいことは『糖尿病・肥満と運動』 を見てください。

まんがで見る『ホルモンとお薬』