女性ホルモンのおはなし


女性ホルモンに対する誤解

そもそも名前が女性ホルモンなので、「女性にのみ存在して女性を女性らしくさせる作用を持っている」と思ってしまいがちですが、これが全く間違いです。女性ホルモンは男女ともに存在し、子宮や乳腺だけでなくほぼ全身の器官に対して強い影響を持っています。

☆女性ホルモンが子宮や乳腺以外の全身の器官に与える作用

 血管
   血管の内張の寿命をのばすことと、損傷した場合に再生を促進すること
   血管を拡張する物質の分泌を促して血流をよくする。血圧も下がる。

 肝臓
   LDLコレステロールの合成の抑制と取り込み促進 
   コレステロールについてはコレステロールの解説を見てください。
   コレステロールについて

 骨
   骨の新陳代謝をコントロールしています。

 脳
   気分に関係している

 皮膚、髪
   ほぼ美容的な問題なのでここでは触れません。


更年期障害に対する誤解


女性ホルモンが不安定になったり減少したりしているのは、閉経の前です。
閉経後は、女性ホルモンが減少していくのはなくて、ほとんどゼロになってしまいます。それでは、女性ホルモンがなくなるといったいどうなるのでしょうか?
女性ホルモンが各器官に与える作用がすべてなくなってしまいます。すると

  血管の内張が傷みやすくなり動脈硬化の原因となる。
   血管を拡張する物質の分泌が低下して血圧が上がる。高血圧症を引き起こす。

② LDLコレステロールが上昇して動脈硬化の原因となる。

③ 骨の代謝に異常が起こり、痛みの原因となったり、放置すると骨密度が下がっていく。

④ 気分が不安定になったり、体温の調節が狂っていわゆるホットフラッシュが起こる。

⑤ 抜け毛やシワ等ですが、ここでは触れません


男性更年期とは?

男性は、男性ホルモンから女性ホルモンを作っています。55歳以上の男女を比べると、男性の中には女性ホルモンがあり、女性の中には女性ホルモンがないというおかしなことになっているのです。では女性ホルモンがないというのは、いったいどういう事態なのでしょうか? 答えは10歳未満の子供に戻ってしまったということなのです。10歳未満のお子さんは、カラダが急激に成長しています。骨もドンドン大きくなっていきます。

成長の止まっている大人がこのような状態に突然なってしまえば、当然大変なことになります。これが男女とも更年期障害による“骨代謝異常と高コレステロール血症”の原因です。骨と血管がボロボロになっていくわけです。大変こわい状態ですね。

男性更年期の原因については、現在医学的には解明されておらず、したがって診断基準もありません。しかし私の経験した症例では、男性ホルモンはあるが女性ホルモンがない、もしくは低下しているという状態があります。そして一般的な更年期の女性よりも酷い“骨代謝異常と高コレステロール血症”を起こしていることが多いです。前立腺癌のホルモン治療を受けている患者さんの腰痛や膝痛を治療して、このことに最初に気が付きました。男性ホルモンを体からなくしてしまうと前立腺癌が消失するとともに、原料を失って女性ホルモンもなくなります。その結果非常に重症の更年期障害がおこって、“骨代謝異常と高コレステロール血症”を起こすのです。